従来のマーケティングのやり方は、アウトバウンドマーケティングと言って、一方的に不特定多数の消費者に対して、広告を提供するというような、押しつけ型の方法でした。
しかし、最近では多くの企業が、インバウンドマーケティングの重要性を認識するようになり、アウトバウンドマーケティングからシフトする傾向にあります。
これからインバウンドマーケティングを実施していこうとする場合に、どういった方法をとっていったらいいのか、また、成功するためには何が必要なのかについて、説明していきましょう。
インバウンドマーケティングとは
インバウンドマーケティングというのは、自社のコンテンツが、ブログや、SNS、動画などを使って、共有・拡散され、見込み客に対して、商品やサービスに興味を持ってもらい、収益に結びつかせることを意図して行う、マーケティング手法のことを言います。
これまでの、一方的な宣伝のやり方とは逆で、ここはあくまでも、ユーザー(消費者)が主体となっているのがポイントです。
ユーザーは、自分の興味・関心のある事柄について調べる過程で、特定の企業が目に留まったり、メッセージを受け取ることを選択したりします。
つまり、売ろうとしている対象の消費者側が、企業の方に近づいてくる、という考え方から、インバウンド(外から中へ入る)という言い方をするようになったのです。
近年の、訪日外国人客のことをインバウンドと呼んでいるのも、外国から日本へやってくる、という意味あいで使われています。
ここでは、あくまでも、ビジネス上でのインバウンドマーケティングについて、詳しく解説していくことにしましょう。
アウトバウンドマーケティングの効果が薄れた理由とは
それまでのマーケティング手法というのは、ご存知の通り、一方的に商品の宣伝をするやり方でした。
例えば、電話のセールス、訪問販売、TVや雑誌のCM、ダイレクトメールなどです。
インターネットが普及するまでは、このようなやり方は当たり前で、消費者は営業マンのセールストークにつられて商品を購入したり、ある意味洗脳のような手法で、無理に買わせられるトラブルも時には起こっていました。
アウトバンドマーケティングでは、消費者にとって興味のない宣伝をひたすら見せられたり、無理に買わせようとするのではないか、と疑いを持つことが多くなってしまうと、効果が無くなる可能性があるでしょう。
また、人々が欲しい商品を見比べて吟味してから選択する、というやり方をとるにつれて、不特定多数を相手に、宣伝をする方法は、効率的とは言えなくなってきました。
このことから、消費者側のニーズによりマッチしたマーケティングの手法に、企業側もシフトしていく傾向になってきたのです。
インバウンドマーケティングの段階的手法
実際にインバウンドマーケティングを実施するにあたっては、以下の4つのステージに分けて、進めていくことになります。
ATTRACT(興味を持ってもらう)
まず、第一段階として、潜在的な客を惹きつけることから必要になります。
その対象は、だれでも良いわけではなく、あくまでも最終的な客となってくれる相手を惹きつけなければなりません。
そのためのツールとして、SEO、SNS、ブログやサイトなどで、ユーザーが関心のある情報を提供し、より多くのアクセスを集めることで、存在を「見つけてもらう」ようししなければならないのです。
CONVERT(見込み客に転換する)
サイトに訪問してくれたユーザーの情報を集めるのが、この段階です。
そのためには、氏名、メールアドレスなどを記入してもらうフォームを最適化し、こちら側はより価値の高いコンテンツを用意して、それをダウンロードする際に、個人情報を入手できる形にしておく必要があるでしょう。
個人情報の確保や、会員登録などにつながれば、見込み客への転換が計れることになります。
CLOSE(顧客化する)
次の段階は、見込み客を顧客化することです。
見込み客の時点では、未だ競合する他社との製品を比較検討している段階にあります。
そこでやるべきことは、自社製品を選んで購入してもらうためのポイントを示すことです。
まずは、見込み客の情報や行動を分析することで、その顧客にマッチしたメール、メルマガなどで、購買意欲を高めていきます。
購買までのプロセス、よくある質問と回答、お客様の声などの情報を閲覧できる体制にしておくのです。
トライアル期間を設けて、購入までのハードルを低くするのも効果的です。
顧客となった後は、彼らを満足させ、継続して購入し続けてもらう施策が必要となってきます。
DELIGHT(満足させる)
一度の購入で終わるか、その後も継続して自社製品の「ファンになってもらう」かは、きめ細かいサポートと、SNSによる拡散が大きなポイントとなってくるでしょう。
今は、個人の情報発信力が拡大しているので、口コミ、SNSでの拡散・共有が、より多くの潜在的、あるいは見込み客を引き込みことになります。
ここが上手くいけば、今後も「リピート客」を増やしていくことにつながるでしょう。
中小企業・ベンチャー企業にインバウンドマーケティングは向いているのか?
展示会や、セミナー、テレビやラジオCMなど、従来のアウトバウンドマーケティングで使われている手法は、広告費に膨大な予算を回せる企業だからこそ、出来るものでした。
一方、中小、ベンチャー企業は、アウトバウンドマーケティングに回す予算も人材も限られている場合が多いでしょう。
そういう意味で、中小企業・ベンチャー企業こそ、インバウンドマーケティングが向いていると言えます。
Webサイトなどによる情報発信は、今の消費者に求められる形であり、広告費を極力抑えられる方法です。
また、顧客の要望にきめ細かに対応できるのが、中小企業の強みでもあります。
ターゲットを絞って、潜在的な客を惹きつけたり、見込み客を顧客化するための、コンテンツ作りも、得意とするところでしょう。
特に、中小企業の中でも、購入までの期間が長期に渡るもの、また、独自の特徴を持った商品を持っている場合などは、インバウンドマーケティングに適合しやすいと言えます。
インバウンド マーケティング ツール
インバウンド マーケティング を行うにあたって、どのようなツールがあるでしょう。
それぞれのツールの特性に合ったやり方で、マーケティングを行うことが必要となります。
各ステージにおいて、利用すべきツールを紹介しましょう。
ATTRACTのステージで潜在客に対して有効な施策
・SEO
・SNS(Twitter、Facebook、Instagramなど)
・ブログ
・動画
・Webサイト
・記事広告
CONVERTのステージで見込み客に転換するために有効な施策
・SEO
・メールマガジン
・Ebook
・ホワイトペーパー
・ランディングページ(資料ダウンロード用のWebサイト)
・Webフォーム
・オンラインセミナー
CLOSEのステージで顧客化するために有効な施策
・Eメール
・製品ページ
・トライアル
・セールスツール
DELIGHTのステージで顧客を満足させるのに有効な施策
・スマートコンテンツ
・SNS
・カスタマーサービス
・ユーザー向けのイベント
これらを段階的に使用していくことで、潜在客からリピートの獲得までの、幅広い範囲を網羅していくことが出来るわけですね。
インバウンドマーケティングを成功させる秘訣
実際に、インバウンドマーケティングを確実に成功に導くための、コツを紹介しましょう。
価値の高いコンテンツでSEO対策
広告費や、実店舗を構える必要がないので、コンテンツ作りに集中することが出来ます。
そこで、価値のないコンテンツを用意していては、マーケティングの効果はゼロに等しいでしょう。
しっかりと価値あるコンテンツは、継続的なアクセスを呼び込みます。
コンテンツ作りに必要なのは、最初にどういった相手に売り込みたいのかを定める必要があります。
つまり、「ペルソナ」を見極めることです。
その上で、Webサイト、ホワイトペーパー、eブック、動画などを使って、高い価値のある情報を提供していれば、SNSでのシェアや拡散を起こすことになります。
同じ趣味嗜好を持つ者同士での情報のシェアは、一気に拡散しやすいので、より見つけやすい状態を作っていくことができます。
自社サイトが検索上位に来るようになれば、より多くのアクセスが見込めるので、そういう意味でも、SEO対策を重視しておくことは、必須です。
ユーザーの求める情報を継続して提供する
例えば、興味はあるけど、他社の製品と比較検討している段階のユーザーに対しては、自社製品の導入事例や口コミなどをの情報を、提供することが重要です。
それぞれのユーザーが求めている情報を整理し、購入に結びつくような判断の材料となるコンテンツを用意しておくことです。
また、整理した情報に関するさらなる新しいコンテンツを継続的に発信して、コミュニケーションを取りながらユーザーをつなぎ留めておくような手法をとることが求められます。
インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの併用
インバウンドマーケティングは、広告費を大幅に削減できるメリットはありますが、場合によっては、アウトバウンドマーケティングと並行して使用することも、視野に入れておくといいでしょう。
インバウンドとアウトバウンドを組み合わせて使っていけば、より大きな利益を望める可能性が高まってくるからです。
まず、市場において、認知度の低い商品を売り出そうとする時、潜在客に対して大々的な広告を打つ、あるいは、DMを送る、展示会を開くことは、一気に認知度を広めるためには有効です。
それによって、新たに興味を持ってもらった見込み客が、検索するなどの行動を起こした際に、必要となるのが、適切なコンテンツなのです。
やはり、インバウンドマーケティングのみの手法だと、コンテンツの準備などを含めて、結果が出るまでの時間が多くかかってしまいます。
アウトバウンドマーケティングは、コストはかかってしまいますが、インバウンドマーケティングではカバーできない部分をおぎなえる良さがありますね。
まとめ
インバウンドマーケティングの意味から、成功のための秘訣までをお伝えしてきました。
どの企業においても、今は、アウトバウンドマーケティングからインバウンドマーケティングにシフトする段階ではあります。
コストを抑えられ、また顧客サポートを充実させて満足してもらえれば、リピートへとつなげることが出来ます。
従来型のアウトバウンドマーケティングも、時には併用することが、インバウンドマーケティングを成功に導くきっかけにもなるでしょう。